淡く儚い月に見守られ
「凄くおいしいよ、杏奈ちゃんは普段から料理を作っているんだね。じゃなかったらこんなに美味い料理作れないよ」

遥翔に褒められ嬉しさがこみ上げる杏奈。

「そうですか? そう言って貰えると嬉しいなぁ。あたし料理だけは自信があるんです、島にいるころから母の手伝いで良く作っていましたから。それにこっちに来てからも出来るだけ自炊しているんですよ」

この時の杏奈の表情にはやさしい笑みが浮かんでいた。

(遥翔さんに褒めてもらえるなんて嬉しいなぁ、これからもっと作っちゃおうかな?)

「そっかあ杏奈ちゃん偉いんだね。だからこんな美味い料理が作れるんだ、ほんと美味いよ、ここ何年かまともに手料理なんて食べたことなかったからほんと嬉しいよ。杏奈ちゃんてすごく家庭的なんだね、そんな家庭的な子好きだな?」

その一言に杏奈は嬉しさを隠しきれなくなってしまった。

「嬉しい、もっと食べてください。たくさんありますから」

その後二人とも食事を食べ終え、楽しい時間はあっという間に過ぎていき夜も更けていった。

「もう帰らなきゃ」

遥翔の何気なく放った一言に寂しさを覚える杏奈。

「えっもう帰っちゃうんですか?」

「もう遅いからね、さすがに一晩共にする訳にいかないでしょ」

「はい分かりました。仕方ないですよね」

「じゃあねご飯美味しかったよ。ごちそうさま」

「いいえこちらこそいつもお世話になってばかりで」

「じゃあねおやすみ」

「おやすみなさい」

こうして遥翔は自分の部屋へと帰っていった。
< 134 / 225 >

この作品をシェア

pagetop