淡く儚い月に見守られ
病院に着いた杏奈は周りの目も気にせず一目散に受付に向かう。

「すみません遥翔さんはどこですか、どこにいるんですか？」

「申し訳ありません。関係者以外の方には御教え出来ないんですよ」

「あたしは関係者です、そんな事言わずに教えてください」

「申し訳ありません、有名人の方なので」

この時受付の女性は、突然飛び込んできた女性が杏奈だとは気づいていなかった。

そこへ駐車場に車を止め終えた畑中が息を切らしながら駆け込んできた。

「こちらの病院に運び込まれました遥翔の所属事務所の者です。遥翔はどこですか、容態はどうなんです？」

そう言うと畑中はバックから名刺を取出し差し出した。

「失礼しました。遥翔さんは現在処置室で処置を受けています。こちらを右に向かって頂いてその先を左に向かった奥にあります」

「ありがとうございます。行くよ杏奈」

受付の女性は畑中の最後の言葉を聞いて初めて最初の女性がモデルの杏奈であったことに気付いた。

それまで落ち着き払っていた畑中であったが遥翔の居場所を聞くと杏奈の腕をつかみ処置室へと一目散に走り出す。

二人が処置室の前に着くとそこには遥翔のマネージャーの五十嵐が呆然と立ちすくんでいた。

「五十嵐さん、どうなんですか遥翔の容態は」

「分かりません、今中で処置を受けているけどどんな状態なのか全く」

「そう、とにかく待つしかないわね」
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