淡く儚い月に見守られ
第十二章『激しい後悔』
三人が処置室の前で待っていると、そこへ岩崎が息を切らし飛び込んできた。

「五十嵐さん! どうなの遥翔の様子は」

「社長! 来てくれたんですか?」

「もちろんよ、遥翔が大変な事になっているのにじっとしてなんかいられないわ。それでどうなの様子は?」

「まだわかりません、処置室に入ったきりで」

五十嵐の一言に大きく肩を落とす岩崎。

「そう、なら待つしかないわね」

(遥翔一体どうしたというの? 今まで倒れるなんて事なかったのに、昔から丈夫な事が自慢だったはずなのにどうして?)

そう思いながらも遥翔の無事を祈る岩崎。

その後しばらくして扉が開き中から三十代半ばくらいの男性医師、渡辺が神妙な顔をして出てきた。

「先生どうなんですか遥翔さんは」

詰め寄る杏奈に対し渡辺医師が重い口を開く。

「とりあえず今の所すぐに命がどうこうというわけではありません。ですが今後入院して頂いて検査をして頂く必要があります」

「それはどういう事ですか?」

五十嵐が問い掛けると渡辺医師はとても言いにくそうに言葉を放った。

「とにかく検査をしてみなければ何とも言えません」

「分かりました。スケジュールの調整をするので少し待って頂けますか?」

五十嵐の発言に渡辺医師の口から発せられた言葉は声を荒らげるものであった。
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