淡く儚い月に見守られ

「遥翔さんご家族は？　出来ればご両親と一緒に聞いてほしいのですが」

渡辺医師の言葉に五十嵐はただ事ではないと感じ、申し訳なさそうに応える。

「先生、遥翔は幼いころに両親を事故で亡くしてそのあと施設で育ったので家族はいないんですよ、ですから代わりに私が一緒に聞いてはだめでしょうか？　私は遥翔が所属している芸能事務所のマネージャーで遥翔の担当をしております五十嵐と申します」

五十嵐はバックから名刺を差し出しながら尋ねる。

差し出された名刺を受取り確認した渡辺医師はその後二人に説明を始める。

「そう言えば最初に遥翔さんが運ばれて来た時にもいらっしゃいましたね、マネージャーさんだったんですか？　わかりました、ではお話しいたしましょう」

神妙な面持ちで一呼吸置き、気持ちを落ち着かせた渡辺医師は大変言いにくそうに静かな語り口で検査結果を告げる。

「検査結果が出ました。結論から言いましょう、今から遥翔さんにとって大変辛いことを伝えなければなりませんが落ち着いて聞いてください」

渡辺医師の放った言葉に遥翔の心は一気に不安な気持ちに支配されてしまった。

「何ですか辛いことって、僕の病気はそんなに悪い病気なんですか？」