淡く儚い月に見守られ
「大変いいにくいのですが遥翔さんの右足に腫瘍が見つかりました。先日組織の一部を取って病理検査もしましたが悪性でしたので骨肉種と思われます、いわば骨のガンのようなものです。ここまでになる以前から痛みはあったはずです。どうしてこんなになるまでほおっておいたんですか、膝もこんなに腫れているのに」

あまりの衝撃に言葉を失う二人、その後五十嵐は懸命に言葉を絞り出す。

「遥翔ほんとなの、あたし全然気付かなかった。ほんとに前から腫れていたの? どうしてその事をはやく言ってくれなかったの」

遥翔は突然告げられた病を信じることが出来なかった。

「嘘だ! そんなの何かの間違いです、僕がガンだなんて。腫れてはいるけどたいした事ないと思ってた、まさかガンだったなんて、この僕がガンになんてなる訳ない」

自分が大変な病にかかってしまった事に依然信じる事が出来ない遥翔に、更に続ける渡辺医師。

「わたしの診断が信じられなければセカンドオピニオンなさいますか? 納得できないのならそれも構いません。でも診断は変わらないでしょう、そうしている間にもどんどん病気は進行して行きますよ、すぐに治療を始めなければ手遅れになります。最悪の場合足を切断しなければいけなくなりますよ、もし切らずに残したとしても骨の一部は切り離し再建手術が必要になります」
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