淡く儚い月に見守られ
「ほんとにそれでいいの? 考えてみて、もし杏奈が自分の為にチャンスを棒に振ったと遥翔が知ったらどう思うかな?」

「そんなの分かってる。でも今はそんな事よりも少しでも遥翔さんのお見舞いに行けるようにしたいの」

「ほんとにそれで後悔しない?」

「後悔なんかしない、それよりも遥翔さんのお見舞いに行けなくなる事の方が後悔する」

「そう、そこまで想っているのなら仕方ないわね。分かったわ、辞退の方向で話を進めておくわ」

数日後遥翔の手術が行われ、この日は杏奈もスケジュールを空けて貰い付き添っていた。

ところが実際に手術をしてみると思ったよりも病気は進んでおり、渡辺医師はしかたなく足を切断すると言う苦渋の決断をしなければならなかった。

手術が終わって数時間後、遥翔が麻酔から目覚めるとベッド脇に杏奈が不安な表情で心配そうに付き添っていた。

「遥翔さん目が覚めました? 手術お疲れさま」

「杏奈ちゃん付き添ってくれたんだね、ありがとう」

ところがその時遥翔は足に嫌な違和感を覚えていた。
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