淡く儚い月に見守られ
【第十三章】『リハビリ開始』
その頃各マスコミが遥翔の病を大々的に取り上げ、右足切断という事実も嗅ぎ付けられてしまい大きく報道されていた。

一方さんざん遥翔に言い寄っていた亜梨紗は遥翔が病気のために右足を切断したと知ると途端に気持ちが冷めてしまい、あれほど付きまとっていたにもかかわらずその後一度も見舞いに来ることはなかった。

そんな中遥翔はようやく抗がん剤治療が終わり義足をつけてのリハビリが始まった。

リハビリ初日、遥翔が杏奈の押す車いすに乗ってリハビリテーションルームに行くと、そこには三十代前半くらいの男性作業療法士、佐藤が待ち構えていた。

「初めまして遥翔さん、今日からリハビリのお手伝いをさせて頂きます佐藤と言います。よろしくね」

「遥翔です、よろしくお願いします」

「じゃあ早速はじめようか」

リハビリを開始する前に杏奈に声をかける遥翔。

「杏奈この後仕事あるんだろ、もういいよ早く行け、遅れるぞ」

「でも」

「良いから早く行けって」

「わかったもう行くね、リハビリ頑張ってね」

「お前も仕事頑張れよ」

「うん頑張る、じゃあね」

そうして杏奈は名残惜しそうに病院を後にした。
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