淡く儚い月に見守られ
ところが病院を出た杏奈は待ち構えていた多くのマスコミに囲まれてしまった。

「杏奈さんですよね、遥翔さんのお見舞いですか？」

「お二人はお付き合いなさっているんですか？」

「遥翔さんの事好きなんですか？　応えてください」

「あなたにとって初の主演映画を辞退したそうですが、それは遥翔さんの看病のためですか？」

「そのことを遥翔さんはどう思っているんですか？」

初めは沈黙を貫いていた杏奈であったが、マスコミの容赦ない質問攻めにとうとう我慢できなくなってしまい語気を荒らげながら反論してしまった。

「やめてください、遥翔さんは映画の件は知りません！　このことが遥翔さんの耳に入ったら負担に思います」

「では杏奈さん一人の判断ということでよろしいんですね、そこまで遥翔さんのことを好きだったということですか？」

「はい好きです、芸能人が人を好きになったらいけないんですか！　人を好きになる事のどこがいけないんですか！　あたしだって人間です、芸能人である前に一人の女の子です。人を好きになる事くらいあります」

この時カメラのフラッシュがより一層激しくなっていた。
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