淡く儚い月に見守られ
第十四章『小さな友人との出会い』
ある日遥翔が入院している病室の前で小さな男の子がずっと中を覗いており、それに気付いた遥翔がやさしく声をかけた。

「おう坊主何だどうした、そんなところで何か用か?」

「坊主じゃないもん、ぼく颯太だもん」

小さな頬をプクッと膨らませかわいく怒ってみせる颯太。

「わりいわりい颯太か、おいで颯太、怖がらなくて良いから」

遥翔がやさしい語り口で向かい入れると、恐る恐る病室に入ってくる颯太。

「どうしたんだこんな所に、お前もこの病院に入院しているのか? 小児病棟からここまで結構歩いたろ。この病院でかいからな?」

(この子も何かの病気なのかな? まだこんなに小さいのに、それにしてもなんだろう、何だか歩き方がぎこちない気がするのは気のせいか?)

「大丈夫だよこの位、全然疲れてなんかないよ。それよりこの病院にすごく有名な人が入院しているって聞いて、おにいちゃんがハルトってひと?」

「なんだそんな事できたのか? そうだ僕が遥翔だよ」

「おにいちゃんどこが悪いの?」

「おにいちゃんか? おにいちゃんは骨の病気で足が無くなっちゃったんだ。ほら」

そう言って布団をまくり上げると無くなった右足を見せる遥翔。

遥翔の切断された足を目にした颯太からは思いもかけない返事が返ってきた。
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