淡く儚い月に見守られ

『突然の悲しい別れ』

その後暫くの間颯太が病室に来なくなると、それまでの明るい雰囲気が消えてしまっていた。

それでも遥翔は颯太に負けじとリハビリに励み、手すりにつかまりながらではあるがふらつきながらも立てるようになっていた。

「やった立てたぞ! 佐藤さん立てた」

「おめでとうよくやりましたね遥翔さん、あともう少しですよ、これからもがんばりましょう。良いですか遥翔さん、焦らずゆっくりと、コツコツと一歩ずつ前に進むのが大事ですからね」

「はいこれからもよろしくお願いします」

この時遥翔は一刻も早くこの事を杏奈に伝えたくてしかたがなかった。

二日後ようやく杏奈が見舞いに来ると待ってましたとばかりに遥翔の口が開いた。

「こんにちは遥翔さん元気にしている?」

「杏奈待っていたよ」

「なに嬉しそうね、何かいい事でもあった?」

「あぁあったとも、なぁ聞いてくれよ一昨日ついに立てたんだ、自分の足で立つことが出来たんだよ。まだふらつきながらだけどな」

満面の笑みで嬉しそうに告げる遥翔、その報告を聞いた杏奈もまるで自分の事の様に喜び笑顔で祝福する。
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