淡く儚い月に見守られ
「遥翔さん今まで颯太と仲良くして頂いてありがとうございました。残念ながら颯太はもうこちらにはこられなくなりました。申し訳ありません」

「なんですかその言い方過去形じゃないですか。あっ分かった退院ですか? それならよかった。謝らなくていいんですよ、めでたい事じゃないですか。では颯太に言っておいてください退院おめでとうって」

「いえ、残念ながらそうではないんです」

「ではなんなんです?」

この時遥翔の中に嫌な予感が走った。次の一言で遥翔は地獄に突き落とされる感覚に襲われてしまい、颯太の父親に対しおめでとうなんて言ってしまった事を後悔する事になる。

「昨日急変しまして、夜遅く颯太は天国へと旅立ちました」

「どうして、そんなはずありません。颯太は必ず病気に打ち勝つって言ってくれました。そんな悪い冗談辞めてくださいよ! ウソですよね、ウソって言ってください!」

「ウソなんかじゃありません、颯太は死んだんです! もう二度とこの手で抱きしめる事も、パパって呼んでくれることもなくなってしまったんですよ」

終始うつむいている父親の瞳からはこらえきれない涙が一気にあふれ出ていた。
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