淡く儚い月に見守られ
第十六章『転移』
颯太が旅立って数日後。この頃の遥翔は颯太の死を目の当たりにし、突然大切な友人がいなくなってしまった事への寂しさとそれは自分にも起こりうることではないかとの恐怖からものすごく荒れていた。

杏奈はそんな遥翔の姿を目の当たりにし、何とかして元気を取り戻してほしいと思っており、この時も遥翔に対して励ましの声をかけていた。

「遥翔さん元気出して、颯太君が今の遥翔さんの姿を見たらきっと悲しむわよ」

杏奈の励ましにもかかわらずこの時の遥翔に杏奈の想いが通じる事はなかった。

「じゃあ杏奈は颯太が死んじまっても悲しくないのかよ」

「悲しくないわけないじゃない、悲しいに決まっているじゃないですか！　だからといっていつまでも落ち込んでいたって仕方ないでしょ！」

「杏奈がこんな薄情な奴だったなんて思わなかった。きっと俺が死んでも涙一つ流してくれないんだろうな」

「どうしてそんな事言うの？　そんな訳ないじゃないですか。だけど遥翔さんには元気を出してほしいの、それがどうしてわかってくれないの？」

「元気なんか出せる訳ないだろ、もうすぐ俺も颯太みたいに死んじまうんだぞ！　颯太みたいに……」
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