淡く儚い月に見守られ
「そんな事ない、遥翔さんは元気になるわ。遥翔さんの病気はちゃんと治るんだから、だからもうそんな事言わないで」

必死に遥翔を励ましつつ大粒の涙を流しながら訴えかける杏奈。

「もう良い帰ってくれ。今日はもう一人にしてくれよ!」

「わかった、今日はもう帰るね。早く元気出してね、遥翔さんが早く元気を出してくれるの待っているからね」

ひどく落ち込んだ杏奈は静かな語り口で言うと、ひっそりと病室を後にした。

杏奈を見送った遥翔は自分のしてしまった事に後悔しひどく落ち込んでいた。

(ごめん杏奈、これで杏奈を傷つけちまったの二回目だな? ほんとはそんなつもりじゃなかったんだ。僕だってほんとはお前が励まそうとしてくれいている事くらいわかっている。でも自分にも起こりうる事だと思うとどうしても颯太の死が受け入れられないんだ)

遥翔がようやく颯太の死を乗り越えた頃、その姿はリハビリテーションルームにあった。

颯太の死に対するショックから暫くの間リハビリを行えずにいた遥翔であったが、この日ようやくの再開となった。

この日いつもと違う事と言えば、この日は杏奈がオフの為久しぶりに遥翔のリハビリに付き添っていた事くらいだった。
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