淡く儚い月に見守られ
「落ち着いて遥翔さん、遥翔さんの命は必ず助けるから。だから一緒にこの病気と闘っていきましょう」

渡辺医師の慰めの言葉にもかかわらず遥翔の興奮は未だ収まる事はなかった。

「颯太の両親にもそう言ったんだろ、それなのに颯太だって結局助けられなかったじゃないか!」

「そんな事ないよ、君の場合はまだ希望はある。早速週明けからにでも抗がん剤治療を始めよう、それと組み合わせて放射線治療も始める」

「それじゃあ退院はどうなるんだよ、せっかく僅かだけど歩けるようになってきたのに。先生歩けるようになったら退院できるって言ったじゃねえか」

「申し訳ない遥翔君、今のままじゃ退院は無理だ。もうしばらく退院は勘弁してくれ!」

「分かったよ先生、その代わり絶対治してくれよな」

「もちろん最善を尽くします」

この時渡辺医師は遥翔に対し最善を尽くすとしか言う事が出来なかった。

渡辺医師が病室を後にすると五十嵐が遥翔に一言声をかける。

「ごめんなさい遥翔、ちょっと御手洗い行ってくるわね」

その後渡辺医師を追いかけた五十嵐は険しい表情で渡辺医師を問い詰めた。
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