淡く儚い月に見守られ
「辛くないわけないよ。やっと歩けるようになってきたのにそこへきて転移だなんて、辛くないわけないじゃないか!」

悔しさを顔ににじませ声を荒らげる遥翔に対し必死に慰める杏奈。

「泣かないで遥翔さん、遥翔さんならきっと病気に打ち勝つ事が出来るよ。だからこんな事でくじけないで」

杏奈は涙を流す遥翔にそっと寄り添う。

「ありがとう杏奈。そうなんだよな、こんな事でくじけてなんかいられないんだよな」

「そうそのいきよ、病気なんかに負けないで」

その後杏奈はちらりと時計を見ると、とても言いにくそうに口を開いた。

「こんな時にごめんなさい、この後仕事なの。もう行かなきゃ」

「こんな時間から仕事なのか?」

「雑誌のインタビューだから時間をずらしてもらったの」

「そうか、それじゃあ仕方ないな。仕事があるうちが花だぞ、がんばれよな」

「うんありがとう、がんばって来るね。じゃあ行ってきます」

そう言って杏奈は遥翔の病室から仕事に出かけていった。
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