淡く儚い月に見守られ
「それって主演映画のこと? やっぱり報道見ていたんだ、あの後何も言わなかったから知らないのかと思った」

「知っていたよ、あの件については今でも怒っているんだからな! もう二度とあんなことするなよ」

「分かっているわ、大丈夫よ心配しなくて、仕事を断ったのはあの映画の件一回だけよ」

「ほんとだな?」

「ほんとよ信じて」

「分かったよ、でも最近テレビの仕事も結構増えてきたんだろ? 収録とかあるんじゃないのか」

自らの体が大変な状態にもかかわらず自分の仕事の心配をしてくれる遥翔に、杏奈は大変嬉しく思えていた。

「遥翔さんあたしだってここに来ない日もあるでしょ、そういう時はテレビの収録とかでどうしても来られない日だと思って。そのほかではマネージャーの畑中さんがいろいろとスケジュールをやりくりしてくれているの。だから心配しないで」

「そうなのか? それなら良いけど」

「それより遥翔さんはどうなの? 抗がん剤の治療って副作用とか辛いって聞くけど大丈夫なの?」

「大丈夫だ心配するな」

本当は堪らなく辛くて今にも逃げ出したいほどであった。それでも杏奈に心配させたくなく、そして何より杏奈にだけはこれ以上自分の弱さを見せたくない為についた嘘であった。
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