淡く儚い月に見守られ
「あたしなんかよりもっと早く結婚している人だって大勢いるわ、あと三か月もしたらあたしもハタチよ、立派な大人じゃない。お願いパパ、少しでも長く彼と一緒にいたいの」

「だからと言ってわざわざ亡くなるとわかっているやつの所に嫁に出せる訳ないだろ。結婚しなくたってそばにいる事はできるじゃないか!」

「そうよ、なにも結婚しなくても」

母親の玲子も反対するが杏奈の決意が変わる事はなかった。

「お願い聞いてパパ、ママ、彼は小さい頃にご両親を事故で亡くしてひとりぼっちなの、家族がいないのよ。だから最期くらいあたしが家族になってあげたいの、彼と結婚したいの」

「彼も同じ気持ちなのか?」

「ううん、遥翔さんにはまだ何も言ってない。あたし一人で決めた事なの」

「そこまでして彼の事……。こんなことになるならお前を東京になんかやるんじゃなかった。ましてやモデルだなんて」

「お父さん、今更そんな事言ったって遅いわよ」

小さな声で呟くように言う玲子。

「確かにそうだな」

「杏奈、最後に聞かせて」

「なにママ?」

「本当に遥翔さんと結婚したいのね」

「うん結婚したい、事務所の許可もとってある。ただし両親の承諾を得なさいって言われてそれで今日来たの」

ここで玲子は一番懸念される事を杏奈に聞いてみる事にした。
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