淡く儚い月に見守られ
翌日徳永医師は朝一番に遥翔のもとを訪れた。

「遥翔さんおはようございます、お待たせしてしまい申し訳ありません。薬の副作用が無くなってずっとぼーっとしているのはなぜかって事ですよね。それは簡単な事です、新しい薬に変わっただけですよ。今度の薬は副作用が少ないの、唯一ぼーっとしやすい事くらいでね」

遥翔はこの説明にも納得せず、激しい口調でさらに問い詰める。

「ウソだ、じゃあどうして主治医まで変わったんですか。それともし仮に薬が変わっただけだとしても今までの薬が効いていたら変える必要ないですよね。ましてや主治医まで変わるなんておかしいじゃないですか」

遥翔に問い詰められ表情を険しくした徳永。

「ですから副作用の問題なんです。今までの薬は確かに効果はあったけど副作用が強すぎたんです。だからもう少し楽な薬に変えてみましょうって、それで薬が変わったんです」

「だけど昨日の看護師さんは何も変わっていないと言いました。どうしてそんな嘘をつく必要があるんですか? それに病室が変わる事は説明を受けたけど薬が変わる事は何の説明もなかった……」

更に続けようとした遥翔であったが体が辛くなり声を発する事が出来なくなってしまい、遥翔にすべてを見透かされてしまったように感じた徳永医師はしかたなく真実を伝える事にした。
< 211 / 225 >

この作品をシェア

pagetop