淡く儚い月に見守られ
「こんにちは遥翔さん、気分はどう?」

「杏奈か、いつも悪いな」

「今日は遥翔さんにお願いがあってきたの」

「なんだお願いって、こんな体だから何もしてやれないぞ」

遥翔はこんな何もできない体の自分に願い事だなんて、一体なんなのかと不思議に思っていた。

「大丈夫遥翔さんにもできる事だから、でも遥翔さんにその気がないと無理だけどね」

「僕にもできる事ってなんだよ、もうこんな僕にできる事なんかないだろ! それになんなんだ? 僕にその気って……」

遥翔はその後のまさかの杏奈の願いに度肝を抜かれる事になる。

「お願い遥翔さん、あたしと結婚して」

「何言っているんだ、お前本気か?」

「本気よ、あたし本気なんだから、もう事務所の承諾も両親の承諾ももらったわ」

「ばか言うな、僕はもうすぐ死ぬんだぞ!」

「それでもいいの、あたしと結婚してください。お願いします」

「そんな事出来る訳ないだろ頭冷やせ。社長もどうしてこんな事許したんだ」

「あたし遥翔さんと一緒にいたいの、家族のいない遥翔さんの最後の家族になりたいの、ねえお願いします」

そう言うと婚姻届を差し出す杏奈。
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