淡く儚い月に見守られ
「ありがとうございます」

「じゃあもう行くな。じゃあなおやすみ」

「おやすみなさい」

そうして遥翔は自分の宿泊する宿へと帰っていった。

その夜杏奈は、憧れの遥翔に会えた事に対し時間と共にようやくドキドキが落ち着いたものの一人になった事で再びドキドキ感が甦ってなかなか眠る事が出来ず、案の定翌朝寝坊してしまい目を覚ますと遥翔の出発時間が迫っていた。

「やだっすっかり寝坊しちゃった、急がなきゃ」

慌てて身支度をしつつもメイクだけは念入りに、それでいて厚化粧になりすぎずナチュラルメイクを心がける杏奈。

準備を終えた杏奈は急ぎ港へ向かう。

港に着いた杏奈が遥翔の姿を探していると、そこへ遥翔がやってきた。

「杏奈!」

「遥翔! ごめんなさい遅くなっちゃって」

「そんな事どうだって良いよ。それよりほんとに来てくれたんだね、来てくれただけで嬉しいよ、本当にありがとう」

この時の遥翔は白い歯がこぼれる最高の笑顔を浮かべていた。
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