淡く儚い月に見守られ
「とにかく今日中には帰れると思うから」

『分かったわ、こっちの仕事は体調不良という事にしてあるからなるべく早く帰ってきて』

「分かっているよ、じゃあ電話切るな」

電話を切った遥翔はしばらくの間どこまでも続く水平線や遠のく島々を眺めながら潮風を体全身に浴び、その後船内に入っていった。

東京に帰ると事務所の社長室で申し訳なさそうに女性社長の岩崎に謝罪する遥翔。

「ただいま、ごめん勝手にいなくなって」

遥翔の謝罪の言葉に当然の様に叱りつける岩崎。

「ごめんじゃないわよ旅ですって? あなた何考えているの!」

その怒りの矛先はマネージャーである五十嵐に向かった。

「五十嵐さん、今回の事はずっとオフなしで働かせていたあなたにも落ち度があるんじゃないの? 遥翔が人気なのもわかるけどもう少し休ませてあげないと、遥翔がこんな事をしでかしたのも無理もないわ」

岩崎の言葉に頭を下げ謝罪する五十嵐。

「申し訳ありません。これからはスケジュールをもう少し考えて仕事を取るようにします」

「そうね、今後はそうしてあげてくれる?」

(遥翔も五十嵐さんから充分言われただろうしこれ以上叱らなくても良いかな?)

岩崎は話題を変える。
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