淡く儚い月に見守られ
「さっこの話はこれで終わり、ところで遥翔、五十嵐さんに聞いたんだけど旅先の島で良い子見つけたんだって？」

この時若干遥翔の表情が輝いた気がしたのを岩崎は見逃さなかった。

「そうなんだ、モデルになりたいって言う女の子なんだけどその子自分はモデルになれないと諦めてしまっているみたいなんだ。取り敢えずスマホで写真を撮って来たから見てくれるかな？」

遥翔は自分のスマートフォンからメモリーカードを取出し、社長室のデスクにあったパソコンに取り込んだ。モニターに映る杏奈の写真を目にした岩崎は想像以上のかわいさにすぐに彼女と会ってみたくなった。

「良いじゃないこの子、デビューしたら売れるかもよ？　すぐにでも会ってみたいわ」

「そうだろ？　その子高校を卒業したら就職のために上京するそうなんだ、だからとりあえずアドレス交換して上京したら連絡くれる様に言っておいたから、そしたら会ってみてくれるかな？」

遥翔の言葉に不思議に思う岩崎。

「どうして今すぐじゃいけないの？　すぐにでも会いに行きましょうよ」

岩崎の意見に応える遥翔の言葉には杏奈を気遣う優しさが見え隠れしていた。

「彼女せっかくこれまであんなにすばらしい自然の中で育ってきたんだ、あともう少しだから高校くらい地元の学校を卒業させてあげたいと思って、それからでも遅くないでしょ、地元といっても通っているのは本土の学校で普段は寮生活みたいだけどね」

この遥翔の考えに納得する岩崎。

「確かにあと半年くらいだものね、まあいいわ、その代り連絡が来たらすぐに教えてくれる？」

「分かった、そうするよ」
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