淡く儚い月に見守られ
「分かりました、ありがとうございます」

『そう言えばまだ名字聞いてなかったね、名字はなんていうの、教えてくれる?』

「上条です! 上条杏奈」

『上条杏奈ちゃんね、じぁあそう伝えておく。急がなくていいから気を付けて来てね』

「はい、ありがとうございます」

その後電話を切った杏奈は急いで身支度をするとメイクをしていると約束通り遥翔から住所を書いたメールが届いた。

その後メイクを終えた杏奈はケータイ電話を片手にアパートを飛び出していった。

事務所に向かう道すがら、杏奈は今回の事を疑問に思い何故かと考えていた。

(どうしてあたしなんかが事務所に呼ばれたんだろう、あたしなんて何のとりえもないのに。とにかく行けばわかるのかな?)

その後何度か迷いながらもなんとか事務所に着いた杏奈は事務所の受け付けに向かった。

「あのっ遥翔さんに呼ばれて来ました上条杏奈と言いますが」

「上条様ですね、お待ちしておりました。少々お待ちください」

受付の女性はおもむろに内線電話をかけた。

「こちら受付です、上条杏奈さまがお見えになりました」

その後受話器を置いた受付の女性は杏奈に対し優しい口調で語りかける。
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