淡く儚い月に見守られ
「ただいまいらっしゃいますのでもう少しお待ちください」

「はいっありがとうございます」

その後ドキドキしながら待っていると、上から降りてきたエレベーターから遥翔が姿を現した。

「いらっしゃい杏奈ちゃん、よく来たね」

「お久しぶりです遥翔さん。あのっこんな所にあたしなんかに何の用ですか?」

「まぁ良いから、とにかく付いてきて」

杏奈は遥翔と共にエレベーターに乗り込んだ。

この時杏奈は朝から感じていた一つの疑問を投げかける。

「あの遥翔さん、今朝からなんか違和感覚えるんですけど」

「どうしたぁ、急にこんな所に呼ばれて緊張してるか?」

「それも十分違和感なんですけど、遥翔さんのあたしの呼び方が初めて会った時は呼捨てだったのに今日は杏奈ちゃんなんて言うから」

「あぁその事か、だってあの時は恋人同士って設定だったろ? 恋人同士になるほど親しい間柄で杏奈ちゃんなんて言ったら変じゃないかなと思って。でも現実にはそれ程親しい訳じゃないからね」

「そうだったんですか、別にいいのに呼捨てでも」

「そういう訳にいかないよ、まだそれほど親しい訳じゃないんだからその辺はきちんとしておかないと」

その後最上階である七階に着いた遥翔は、エレベーターを降りると再び歩き出した。
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