淡く儚い月に見守られ
杏奈は訳も分からずドキドキしながらその後ろを付いて行くと、ある部屋の前にたどり着いた遥翔はおもむろにドアをノックした。

「どうぞ!」

やさしそうな声の返事が聞こえ、ドキドキしながら遥翔の後に続き中に入るとそこでは女性でありながら父である先代の後を引き継いで三年ほど前に社長になったばかりの岩崎が出迎えていた。

「社長来ましたよ、彼女が例の女の子です」

「待っていたわよ、あなたが杏奈ちゃんね。初めまして、私がこの事務所の社長をしている岩崎と言います」

「初めまして社長さん。上条杏奈と言います、よろしくお願いします」

あいさつと共に深々と頭を下げる杏奈。

「写真で見るよりも実物の方がもっとかわいいわね」

岩崎は杏奈の体を頭の上から足の先までじっくりと観察し始めた。

「なんですか? 突然呼び出して」

元気いっぱいに挨拶をしたものの、突然体中を舐め回すように観察する岩崎に不快感を覚え後退りしてしまう杏奈。

「良いからじっとしていて」

岩崎の声に杏奈は体を硬直させ動けなくなってしまった。
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