淡く儚い月に見守られ
「そうね、顔立ちは悪くないわね。悪いけど上着一枚脱いでみてくれる?」

岩崎の要求に言われるがままショート丈のグレーのワンピースの上に着ていたGジャンを脱いだ杏奈。そんな杏奈に対し遥翔が声をかけてきた。

「杏奈ちゃん上着持つよ」

「ありがとうございます」

小さな声で礼を言った杏奈が遥翔にGジャンを差し出すと、そこへ岩崎の声が続いた。

「やっぱりね、スタイルも悪くなさそうだわ、じゃあちょっとテストしてみようか」

「あのっ一体なんなんですか? なんですかテストって」

杏奈は一体なんなのか、なぜ彼らが自分なんかをこんな所に呼んだのか不思議に思っていた。

「杏奈ちゃんあの時モデルになりたいって言っていただろ? うちの事務所にはモデル部門があるからね。島から帰った後社長に杏奈ちゃんの事を話したら僕の見立てなら間違いないんじゃないかって。ほら、あの時君の写真を撮らせてもらったろ? その写真を社長に見てもらったら一度会ってみたいって言うから、だからオーディション、あの時僕に連絡くれるように言ったのはこういう事だったんだ。君の事なんとか出来るんじゃないかってね」

杏奈はまさか自分がオーディションをしてもらえるという事に驚きを隠せずにいた。
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