淡く儚い月に見守られ
「わぁ、プロのメイクさんにメイクをしてもらうなんて初めて。よろしくお願いします」

飯田は杏奈の気持ちいいまでのあいさつに笑顔で語りかける。

「杏奈ちゃんの場合素材が良いからナチュラルメイクの方が映えるわね。メイクは薄めにしておくわね」

「はい、お任せします」

メイクをしてもらっている杏奈はプロの手によりみるみるきれいになっていく鏡に映る自分の顔をわくわくしながら眺めていた。メイクを終えた杏奈はメイクルームを後にし、スタジオへと戻っていくと見違えるほどかわいくなっていた。

「すごくかわいいよ杏奈ちゃん、ねえ社長」

遥翔が岩崎に同意を求めると岩崎もそれに応える。

「えぇほんと見違えたわ。ヘアメイクもばっちりやってもらったのね、ほんとかわいいよ」

岩崎の言葉にお世辞と思いつつもついうれしくなる杏奈。

「そうですか？　お世辞でもうれしいです」

「何言ってるのお世辞なんかじゃないよ。僕はほんとにかわいいと思っているんだから」

「ありがとうございます遥翔さん」

そんなやり取りをしている二人のもとに中野が声をかけてきた。
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