淡く儚い月に見守られ
「そうですか? そのチェスト気に入っているのでなんかうれしいです。このガラステーブルだってあたしが自分のお小遣いで買ったんです、だから手放せなくて。両親にはこっちで新しいのを買ったらって言われたんだけど買ってからまだ三年くらいでしょ、たった三年で手放すのももったいなくてなんとなく持ってきちゃいました、安物ですけどね。でも安物と言っても結構するんですよ、さっきも言ったように島に届くものは船での輸送費が上乗せされちゃいますから」

「へぇそうなんだね、島の暮らしって大変なんだ、だから杏奈ちゃんは物を大切にするのかぁ? 物を大切にする事って大事だよね。それにこのテーブルだって三年しか使わないんじゃもったいないじゃない? けどさぁ、こういっちぁあ失礼だけどあの島でバイトなんてできるとこあるの?」

「違うんです、ここにある家具たちはバイトをして買ったわけじゃないんです。実際バイトをしたのは高校生になってからだから本土の高校の寮に入っていた時で、寮では個人的な家具はあまり置けないからここにあるのはほとんどあたしが中学生になるまでの間に両親に買ってもらったものばかりなんです」

「そういうことだったんだね、それよりごめんね島にバイトできるとこないみたいに言っちゃって、失礼だったよね」

「良いんですよ、確かにすごい田舎の島ですからね、こんな何もない島でバイトだなんて疑問に思うのも無理ないですよ」

次に杏奈はお気に入りのビーズクッションを指さした。
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