淡く儚い月に見守られ
「ひとつ教えて下さい」

「何でしょう、出来る限り応えますので言ってみて下さい」

「ありがとうございます。お聞きしたいことというのは費用の事なんですが、この子が売れるためにはいくら位必要なんでしょうか?」

「と言うのはどう言う事でしょう」

言っている意味が分からず、思わず岩崎は聞き返してしまった。

「レッスン料などの事です。どの位かかるものなのでしょうか?」

この質問に対し岩崎は笑顔を浮かべ応える。

「ご安心ください、今回のお話はタレントスクールへの入学のお誘いではありませんし、もちろんうちはどこかの悪徳事務所等とも違いますのでそういったものは頂きません。ただすぐに売れるとは限りませんので杏奈さん自身の生活費としてしばらくはアルバイト生活をして頂く事になるかもしれません。あと申し訳ないのですがおそらくアルバイトだけでは生活が成り立たないと思いますので親御さんからの仕送りも考えたほうがいいと思います」

「確かにそうですね、アルバイトは必要かもしれません。でもレッスン料が必要ないと聞いて安心しました」

「それでアルバイト先なんですが、杏奈さんにはまだはっきりと返事をもらってないのですがうちの事務所で事務をやってもらおうと思っています。もちろんモデルの仕事を優先します、それなら融通が利きますので」

ここで直樹は一度『ふーっ』と大きく深呼吸をすると杏奈に気持ちのほどを尋ねた。
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