淡く儚い月に見守られ
地方でおよそ三週間のロケが終わるとその翌日東京に帰ってきた。

「お疲れ様でしたぁ」

事務所の前でスタッフたちと解散する杏奈。その後杏奈は畑中の運転する車で我が家へと帰っていく。

「ただいまぁ」

誰もいないしんと静まり返った部屋に響き渡る杏奈の声。杏奈は遥翔の買ってくれたエスプレッソメーカーでエスプレッソを淹れる。

「ふぅっ疲れたぁ、遥翔さんに報告しないと」

ケータイのメールを操作する杏奈。

「遥翔さんただいま、今帰ってきましたぁ」

ところがその日は遥翔からの返事は帰ってこなかった。

「返事帰ってこないな、遥翔さんまだ仕事中なのかな?」

遅くまで待ってみたが返事が返ってこない為この日はもう寝る事にした杏奈。

翌朝目を覚ました杏奈がケータイを見ると遥翔からのメールが来ている事に気付く。

『おはよう杏奈ちゃん、昨日はごめんね、あの時まだ仕事中だったんだ。気付いた時にはもう遅くてね、すぐに返信しようと思ったんだけど夜遅かったから寝ていたら悪いと思って今朝にしたよ。初めての写真集お疲れさま、良い作品が出来ると良いね。今日は一日ゆっくり休むと良いよ』

(遥翔さんわざわざ返事くれたんだぁ、返さなきゃ)

「おはようございます、わざわざお返事ありがとうございます。今日は一日ゆっくり休みたいと思います。本当にありがとうございます」

この日杏奈はこれまでの疲れを癒すように一日中どこにも出かけず泥のように眠っていた。
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