淡く儚い月に見守られ
「あっそれと嬉しい知らせがもうひとつ、テレビの仕事も決まったわよ」

「そうなんですか? なんか嬉しいです。でも緊張するなぁ」

「あなたにとっては初めてのテレビの仕事だから確かに緊張するかもしれないけど、その緊張をはねのけてしっかり頑張ってね」

「はい、張り切ってがんばります」

数日後、新たに創刊されるファッション誌の最初の撮影の日。杏奈は現場の撮影スタジオに着くとスタッフやほかのモデルたちに挨拶をした。

「おはようございまぁす、杏奈です。今日はよろしくお願いしまぁす」

その中の一人、亜梨紗にも声をかけた。

「亜梨紗さん初めまして、杏奈と言います。今日はよろしくお願いします」

ところが亜梨紗からは思ってもみない返事が返ってきた。

「あんたが杏奈って言うの? あんた遥翔と仲が良いんだって?」

突然の高圧的な態度に驚き、思わず後ずさりしてしまった杏奈はわずかにおびえながらも応える。

「はい仲良くさせて頂いていますけど」

「どういうつもりで遥翔に近づいたの? あんたなんかが遥翔と付き合うなんて生意気なのよ!」

鋭い眼光で睨みつける亜梨紗に杏奈は恐怖を覚え、まるで亜梨紗の周りの空気が凍りつくようであった。
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