淡く儚い月に見守られ
「なんですかいきなり、別に近づいたなんて思っていません。遥翔さんにはデビューの時とか色々とお世話になったのでそれで仲良くさせて頂いているだけです」

「どうだかね、あんたも遥翔に気があるんじゃないの？　あんたなんかに遥翔は渡さないんだから」

亜梨紗は依然鋭い眼差しで杏奈を睨みつけており、その為テレビで見ていた清純なイメージの亜梨紗とのギャップがあまりにも大きく、そしてまた亜梨紗のあまりの気迫に驚いていた。その後は亜梨紗の痛いほどの視線を感じながらも何事もなく撮影は続き、ようやく無事にすべての撮影を終える事が出来た。

その夜杏奈は創刊誌の初仕事という事で無事に撮影が終えた事を遥翔に伝える。

いつものようにベッドに横になりながらうつ伏せになり膝を曲げ、両手で持ったケータイを顔の前に持ち、足を交互にゆらゆらとさせながらメールを打つ杏奈。

「遥翔さんお疲れ様です。今日無事に創刊誌の初めての撮影が終わりました」

メールを打ち終えた杏奈であったがすぐには遥翔からの返事が返って来る事はなかった。

「返事こないな？　しょうがないよね遥翔さん人気者だもん。きっと忙しいんだろうな」

杏奈はコーヒーを淹れ飲みながら気長に待っているとしばらくしてからメールではなく音声通話でかかってきた。
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