淡く儚い月に見守られ
「杏奈ちゃん僕だ、遥翔だよ開けてくれ」

遥翔の声を聴いた杏奈は安心しつつも恐る恐る玄関の鍵を開ける。遥翔が部屋に入ると杏奈は恐怖に怯えブルブルと小刻みに体を震わせていた。

「大丈夫杏奈ちゃん？」

「はい大丈夫です、だけど誰か知らない人がこの部屋に入ったかと思うと怖くて」

あまりの恐怖と孤独感に襲われたため遥翔にしがみつく杏奈。

「大丈夫！　僕が来たからもう安心して。おそらく君の熱狂的なファンがストーカーとなって部屋に侵入してしまったんだろう、それで杏奈ちゃんの私物であるマグカップを持って行ってしまったんだ。信じられないかもしれないけどそれしか考えられない」

「やっぱりそうなんでしょうか、今思うと帰ってきた時玄関の鍵が開いていたように思います」

「きっとそうだよ。それより鍵はかけていかなかったの？」

「そんなことありません、しっかりかけたはずです」

「そう、じゃあわざわざ鍵を開けて入ったってことだね」

ところがそれまでやさしかった遥翔の表情が突然険しいものへと変貌していった。
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