淡く儚い月に見守られ
「それは避けた方が良いんじゃないか? 勝手に侵入されマグカップを持っていかれたけどそれ以外に被害があったわけじゃないみたいだし、下手に騒ぎ立てたらどこから情報が漏れるか分からない。マスコミにある事ない事書きたてられるのがおちだ」

『それもそうね、でももうそこには住めないわね、早く別の部屋を探さないと。そもそも今までそこに住み続けていたのが間違いだったのよ、これからはセキュリティーのしっかりしたマンションに住まわせないと』

「とにかく今日は僕が利用している例のホテルに連れて行きます、この時間なら誰かに見られる事もないでしょう。念のため裏口から入れてもらえるようにします」

『ありがとう、お願いして良いかな?』

「分かりました」

ところが直後慌てる様に声をかける畑中。

『待って、やっぱりあなたたち二人だけじゃ目立ちすぎるわ。それにホテルだなんて誤解されても言い訳できないじゃない。まだアパートにいるんでしょ、今から行くから待っていて』

「はいわかりました、じゃあ待っています」

そうして遥翔は電話を切り、杏奈とともに畑中を待つ事にした。

「杏奈ちゃん畑中さんがこっちに来てくれるって、来るまで待ってよう」

「分かりました」

この時杏奈は少し残念な気持ちでいた。なぜなら遥翔とのスキャンダルなら別にかまわないと思っていたからであった。
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