空の色は何色か
白衣の男が忙しそうにカルテ庫に入って来た。

歳は20代前半位であろうか。

背丈は170後半位で、ショートストレートな黒髪で横にナチュラルに分けている。

顔は薬局でよく売っている様なサージカルマスクをしているのでよくわからない。

手には厚さの疎らなカルテを10冊位を持っていて、
胸の名札には外来准看護師と書かれている。

長袖の白衣を腕まくりして腕からひっそりと汗が滲む。

白衣の男はスチールに割り振られた番号にカルテを番号順に収納をする。

カルテを差し込むなり埃が空中を舞う。

本棚を近くでみれば埃が積もっており、
掃除はおろか人の出入りも稀有みたいだ。

カルテ庫にある唯一の窓もカーテン越しであってもしっかりと埃を映している。

しかし、白衣の男は埃に一切の気を持たず駆け足でカルテを収納している。

8470番のカルテを8523番と8556番の間に隙間を開けて差し込もうとした時、
白衣の男の手がピタリと止まった。

刹那、
白衣の男の瞳孔がみるみる開いていく。

8556番の患者氏名が視界に入ったと同時にだ。

過去にこの患者と何があったのかは知る由もないが、

白衣の男はそのカルテを手に取った。

最後のページに主治医が署名した記事がある。

何を書いているのか分からない位のみみず文字だが、
「警察」「死亡」「診察終了」だけは辛うじて読めた事から、
このカルテの患者はもうこの世に存在していないのだろうと容易に想像できた。

白衣の男は最後の記事からゆっくり後を追う様に逆行していった。

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