嘘吐き
しばらく舜の家の前で呆然とした後、

ニタっと笑って目指す自宅へと足を進めた。

厚くて灰色の雲が寒い空を覆う。

あぁ…僕もあの空の彼方に消えてしまいたい。

何も無かったかの様に…。

空を見上げながら歩いていると―…



 「はーるーかー!!!!!!!」



ランドセル越しに誰かが背中に飛びついてきた。

その重みで危うく後ろに転びかける。



 「なっ、何すんだよ!!湊!!!」



振り向いて湊と呼ばれる張本人を睨みつける。



 「怖いって!」



冷や汗を流しながら後ろに後ずさりをする、こいつ。

名前は本庄湊。

僕の幼馴染で僕の親友。

可愛くて頭はいいが運動ダメダメの『正に女子!!』と言える様な子で、

舜と同じく不良になっていない一部の人間。

だが、僕と最強のライバル。

どうしてライバルかと言うと…



 「はぁ~♪赤崎カッコいい~♪」



 「へ、へぇ…」



そう…。赤崎舜の事を、こいつも好きなのだ…。

ふふっ、湊には勝てないって分かってるのに…

舜のことを嫌いになれないなんて…。
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