再会〜どうして?〜

それきり黙った私たちに気づいて
大人な多田さんが話を切り出してくれた。

「紹介しましょう。
こちらが新しく担当になる、石井です。」

レオくんは名刺を出して挨拶した。
「石井 聖平です。」

私と愛ちゃんも名刺を出し、順に挨拶した。

そしてレオくんは、
「このような仕事を任されるのは初めてなので至らない点もあると思いますが、多田さんに聞いたりしながらやっていきますので、よろしくお願いします。」
と言った。さすがだ。
やはりかなわない。私も言わなければならなかったのに。むしろ私の方がクライアントの希望を叶える側なのだから私の方が先に言うべきだった。
いつまで経っても、追いかける側だ。追いつけない。

出遅れながらも
「こちらこそ、私もまだまだ未熟で、頼りないと思いますが、精一杯やらせていただきますので、一緒に良い研修旅行にさせていただければと思います。」
とだけ言えた。
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