テイスト・キッス。【短編】
仮装であって、仮装じゃないんだから。
それよりも―――……。
「さてと、もうパーティーの時間だし、体育館行こうか」
「あ、うん」
あたしも里枝に続き立ち上がり、魔女の黒いスカートをひるがえした。
あたしは黒いワンピースを着て、いつもの二つ括りの頭に黒いとんがり帽子を被っていた。
ハロウィンの今日は、午後から体育館で仮装パーティーが開かれるんだ。
あたしは胸のうちに漂うモヤモヤを打ち消し、これからのパーティーに思いを馳せた。
「響くん、どこ行ったの〜?」
そんな声が聞こえたのは、パーティーが始まってしばらくした頃だった。
声のした方をチラリと見てみると、声の持ち主は黒ネコ姿の柏木さんだった。
ドキリとする心臓を押さえながら、辺りを見渡すが確かに神藤くんの姿が見つからなかった。