テイスト・キッス。【短編】
今日はハロウィン。悪霊がはびこり、それを払う日。
もしかして、こんな日は吸血鬼である神藤くんは体調が悪くなるのではと、ずっと気になっていた。
しかし―――……。
「来るな!」
あたしの足は神藤くんの怒声によって、その場に縫い留められてしまった。
「……な……んで……」
喉がカラカラで、上手く言葉が出せなかった。
もうあたしは神藤くんにとって、いらない人間なの?
あたしが拒否したから。
もう神藤くんには柏木さんがいるから。
そこまで考えたとき、あたしの両目からはまるで決壊したかのように涙が溢れていた。
何がこんなに悲しいのかわからない。
でも、止まらないの。
なんで……、なんで、なんで!?
自分の気持ちがわからない。