テイスト・キッス。【短編】
わからないけど、だけど。
「……嫌だよ!!」
あたしは一言そう叫ぶと、涙を流したまま彼の顔を見据えて、足を一歩踏み出した。
―――あたし、おかしいのかな。
さっきから苦しそうな彼の顔を見ていると、胸がドキドキするの。
―――キス、したい。
後、一歩で彼に触れることが出来る。
そこまで来たとき、彼は再び叫んだ。
「近寄るな!今のオレは何をするかわからない。自分を止められない」
…………?
「……どういうこと?」
あたしは眉間に皺を寄せながら、彼に触れようとしていたそのままの姿勢で止まった。