テイスト・キッス。【短編】
「見て……わからな……いか?オレは……今……飢えてる……んだ。抑え……が効かない。今……、側に来られたら……ヒナ……の血を全……部飲み干し……てしまうかも……しれない」
神藤くんは苦しそうに、荒い息で途切れ途切れに話した。
……飢えてる?
吸血鬼の飢えた姿なんて初めて見たけど、これが飢えてるってこと?
でも
「……柏木さんは?」
「な……んのこと……だ?」
「柏木さんの血も吸ったんでしょう?」
―――少しの間の後、彼は唇の口角を上げた。
「……吸ってないよ」
「……そんなはずない!あたしは見たんだから!!」
神藤くんが彼女の首筋にキスするところを。
「確かにヒナが先に帰った日、抱いて欲しいって言われて、抱けはしないが血だけ頂いてしまおうと思った。でも、吸えなかったんだ」