テイスト・キッス。【短編】

「…………!!」





「オレはおまえ以外いらない」





苦しそうにしながらも、真っ直ぐあたしを見つめてくる神藤くんに向かって、あたしは最後の一歩を踏み出した。




「……やめろ!今日が終われば、明日になればマシになるから、今日だけは……ハロウィンでいつも以上に血を必要とする今日だけは、……やめてくれ」


彼の必死の懇願も、まるで聞こえないかのように、あたしは両手で彼の頬を包んだ。


「……いいよ」


あたしはそう言って、彼の苦しそうな首筋を解き放って、そこにキスした。


無理矢理入り込んだ彼の胸の中で、あたしは彼を見上げた。



「欲しいなら、全部あげる」


あたしは黒のワンピースの胸元を少し開いて、首筋を彼に見せた。


その瞬間、彼の喉がゴクンと大きな音を鳴らす。


口元から覗く牙がキラリと光る。

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