テイスト・キッス。【短編】
そんなあたしの異変に気付いたのか、神藤くんは慌てて手を離した。
「大丈夫か!?悪い、血を吸い過ぎたみたいなんだ。さっき鉄分の錠剤飲ませたから、明日にはマシになると思うんだけど」
―――は?
ぐるぐるで考えがまとまらない中、有り得ないことを言われた気がした。
飲ませた?
寝ていたのに、どうやって?
寝ている人間に飲ませる多分たった一つの方法に気付いて、あたしは恥ずかしくなった。
抵抗出来ない人間に口移しのキスするなんてと怒りたいのに、唇を動かすことすら出来なかった。
―――凄く怠い。
あたし、本当に血を吸われたの?
あたしは視線の先にいる神藤くんを見つめながら、考えていた。
―――同じクラスの神藤響(シントウ ヒビキ)くんは、成績、運動神経、容姿のどれを取っても人より抜きん出ていて、一年生ながらも学校で結構有名だった。