テイスト・キッス。【短編】
変わった日常
それから、彼は本当に一ヶ月我慢した後、3日に1度のペースであたしの血を奪うようになった。
初めての時とは違って量を気にしてくれているのか。もう倒れるほどの貧血に悩まされることはなかった。
とは言っても、軽い貧血になっちゃうから、鉄分の錠剤は手放せなくなっちゃったけど。
あたしはスカートのポケットに入れて持ち歩いてる小さな錠剤入れを握った。
そうして迎えた二学期、ドアを開けると同じクラスの女の子が席に着いて泣いていた。
頬にかかる短い髪に、涙の大粒で濡れた大きな瞳に長い睫毛。その姿は、あまり話したことはないけど、可愛いって有名な柏木さんだ。
「どうしたの?」
あたしの声を聞いて、柏木さんは一層泣き声を大きくした。
「この子、朝一で神藤くんに告白してふられたんだって」
柏木さんの代わりに答えたのは、柏木さんの隣で背中を摩っていた里枝だった。
「それって、やっぱり―――?」
「そうよ!君じゃないって言われたの!!」