今すぐここで抱きしめて
さりげなく腕時計を見ると、時間は20時を過ぎたところ。


今の時間だったらまだ誰か残っているから、こんなアラサー女(なんか自分で思って悲しくなってきた)よりもっと若い子を誘った方が楽しいだろうに。


「あの、ダメですか?」


少し眉を下げておずおずと聞く彼が、なんか可哀想に思えてきた。


うーん……、まぁ、フェア当日に成約に持ち込めたのも飯田くんががんばってくれたおかげだし、上司として少しは労ってもいいのかもしれない。


どうせ飲む予定だったしね。


「いいよ。行こう。じゃあ、駅近くにBlueっていうバーがあるから、残務を終えたらそこで待ち合わせって事で」


「分りました! じゃあ、後で。絶対に来てくださいね!」


まるで駆け足でスキップするかのような雰囲気で行ってしまった。


何がそんなに嬉しいんだか。


飯田くんって面白いのかも。


そう思ったら、自然に頬が緩んでいる自分がいた.


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