今すぐここで抱きしめて
「小柳さんっ!!」


背後から呼ぶ声が聞こえた。


立ち止まる事にためらって、そのまま歩みを進めた。


「小柳、さん、待っ、て!」


走っているのか、息切れの声が混じって聞こえる。


何で追ってくるのよ……


やっぱり殴っちゃったから?


自然と駆け足になるけれど、8センチのヒールじゃ敵わず、


「追いついた……」


腕を掴まれて、止まらざるを得なくなった。


「何?」


無理やりにでも誤魔化さないといけないって分かっているのに、自分でも驚くぐらいの低い声が出た。


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