今すぐここで抱きしめて
「すみません……」


そう言って腕を解いてくれた飯田くんは気まずそうに視線を伏せた。


だけど、私の腕は掴んだままで。


「あの、さっきは無神経な事言ってすみません」


「…………」


「でも、小柳さんの事、本当に好きなんです」


「…………」


「だから、その……」


「ねぇ、飯田くん」


私の不意の呼びかけに、きょとんとした顔で私を見た。


その顔が純粋そうで素直そうで、


「不倫なんかしている私のどこが好きなの?」


イジワルな質問をしたくなった。


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