今すぐここで抱きしめて
「おはよう、よく似合ってる」


先に入ってしまった彩ちゃんや中の人に聞こえないぐらいの声ですれ違いざまにそう言われた。


右手でそっと耳に触れて、そこにある石を確認する。


嬉しくて自然と顔がニヤけて、後ろ姿でもいいから山瀬さんを見たいと思って向かった先を見ると、彼とすれ違ってこっちに向かってくる飯田くんと目が合った。


ドキッ……


イケナイところを見られたような気分になって固まってしまった。


「おはようございます」


「お、おはよう」


「入らないんですか?」


「入るけど……」


私の動揺を分かってかクスッと笑って、


「大丈夫ですから」


そう言って中に入ってしまった飯田くんの態度が、私とは違って飄々としていて悔しくて唇を噛んだ。


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