今すぐここで抱きしめて
私の言葉に被せるようにしてそう言った山瀬さんに小さく溜め息が出た。


だって、去年も一昨年もそう言ってたから。


3回目になるとさすがにもう覚える気はないんだってそう思ってしまう。


まぁ、所詮そんな関係な訳だし、祝って欲しいだなんて思うような年齢でもないし。


ただ……、


ただ、チクッと胸に何かが引っ掛かる感じがするだけ。


「歩美……」


名前を呼ばれると同時に身体を反転させられて、唇が重ねられた。


最初から深いキスで、さっきまで吸っていたであろうタバコの味が口の中に移ってくる。


口内を動く舌に翻弄されて、獰猛なキスは私の思考を止めてしまう。


甘い痺れが身体を貫いた時、部屋のドアがノックされた。

< 7 / 45 >

この作品をシェア

pagetop