sweet memory
「出なくて良いんですか?」
「あぁ」
「でも、鳴り続けてますよ?」
「ほっとけば鳴りやむ」
「でも……」
「仕事の電話ではないから大丈夫だ」
「そうですか」
未だに鳴り続ける電話。
切れてはまたかけ直してくるの繰り返しで、花菜は気になって仕方がなかった。
「それより、まだ6時だ。もう少し寝ていたらどうだ?」
「でも、今日は学校ですし、朝ご飯だって作らないと…。それに、洗濯や掃除だって…」
「…8時に迎えにくる。ここから学校は10分もあれば着く。朝ご飯は……生憎、最近料理をしていないから、材料がない」
「いつもどうしているんですか?」
「大概はコーヒーだけだな」
「そんなんじゃ駄目ですよ。ちゃんと朝ご飯を食べないと1日の始まりなのに、力が出ませんよ?それに、副社長さんが倒れてしまっては大変です!」
「…創みたいなことを言うんだな」
「創くんですか?
…あぁ、きっとママの口癖だからですかね?昔からよく言われてたので、私も移っちゃったみたいです」
「あぁ…そうか」
「?」
奏大は何か思い出したようで、うっすらと笑みを浮かべていた。
花菜の視線に気付いた奏大は、元のクールな表情に戻ってしまった。